【ドラえもん】辻村深月「凍りのくじら」ひみつ道具が世界を救う 救いの言葉に溢れた一冊!

      2016/03/22


この本は、私が人生で一番最初に読んだ辻村さんの本だ。

500ページ以上ある長い本で、最初は「こんな分厚いもの読めるかな」と不安だったが、それは杞憂に終わった。

長い本なのに、言葉の1つ1つが私の心に染み渡っていく。

特殊能力などがあるわけじゃない。少し変わった境遇にある高校生の、だけども普通の日常。

その日常に異様に感情移入してしまうのは、辻村さんの「人の心を描く技術」の賜物だろう。

この物語の主人公は高校生の芦沢理帆子。

芦沢理帆子は数年前に失踪した写真家、芦沢光を父にもつ。父とドラえもんが大好きな、賢い少女だ。

凍りのくじら (講談社文庫)

そう、この話のキーパーソン(?)は間違えなくドラえもんだ。

日常に当たり前のようにドラえもんの道具が登場し、ドラえもんはいつだって生きていくためのヒントをくれる。

「ドラえもんなんて幼稚だ」と大人は言うかもしれないが、誰もが一度はドラえもんの恩恵を受けている。

私自身も、人を思う心や身近な恋愛、自然を大切にする精神など、小さいころ無意識のうちにドラえもんに教わってきたのだろう。

「凍りのくじら」はかつて子どもだった大人なら、間違いなく楽しめると思う。

この本のもう一つの魅力は、主人公の理帆子

理帆子は日常を達観し、身の回りの人を本の登場人物かのように俯瞰的な見方をする、とても冷めた個性の持ち主だ。

共感できない読者も多いだろう。しかし、実は違う。

人に興味があるくせに冷めているふりをし、人とつながっていたいくせに、一人で平気のような顔をする。

現代に生きる私たちには、誰でも多かれ少なかれそんな面があると思う。みんな、寂しくて寂しくて仕方がない。誰でもいいからそばにいてほしい。それが自分のステータスにもなる。

しかし、実はそうではない。自分が本当に誰かを必要とすること。自分が特定の誰かと繋がりたいと認め、自分から歩み寄ること。

それが一番大切なのではないかと、理帆子は訴えている。理帆子は誰よりも人間味に溢れている。

だからこそ、魅力的なのだ。 私はこの本を読み終わった後、この本を友人に勧め、上司に勧め、旦那に勧め…いろんな人に勧めできたが、まだ足りない。

もっともっと多くの人に読んでほしい。世界観を壊さないなら、実写化してほしい。私が大切に、繰り返し繰り返し読んでいる本の1つだ。 

凍りのくじら (講談社文庫)

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