「命売ります」は私が人生で初めて読んだ三島由紀夫の作品だ。
三島由紀夫は知名度が非常に高い、昭和を代表する純文学の文豪である。
しかし、私は純文学が苦手で最近の人気作家の本ばかりを読んできた。
では、なぜ三島さんの作品を読もうと思ったのか?
それは、昨年ピースの又吉さんがテレビで「命売ります」を宣伝していたからだ。恐る恐る読み始めた1冊ではあったが、なんと3日で読了することができた。
魅力1 純文学とは思えぬ読みやすさ!
「純文学」と聞くと言葉が難しく、感情移入が困難で気合を入れないと読めないというイメージがある。
しかし、「命売ります」は全く違った。この話は、自殺に失敗した青年が「一度は捨てた命だから」と「命を売る」商売を始めるところからスタートする。
その命を悪用しようとする人たちに振り回されながら、なかなか命を失うことができず、話は進行する。
テンポの良い展開や、回りくどさのない表現のおかげで、ページをどんどんめくることができた。
三島作品でこれほど読みやすいものがあったのか!私は衝撃を受けた。
50年以上前の作品のため、確かに言い回しが古臭く感じる。
「サービス」を「サーヴィス」と書いたり、送りがなが変だったり、現代ならひらがなで書かれるところが漢字で書かれていて読めなかったり…。
しかし、それも当時の文学を垣間見た証拠であり、タイムスリップした気分になった。多少言い回しが現代と違っても、ストーリーを理解するのには支障はまるでなかった。
魅力2 三島由紀夫の死生観がわかる
三島由紀夫は多くの人が知っているように、自殺でこの世を去った。
「命売ります」の主人公はまさに自殺を試みた青年なので、なんだか三島由紀夫と重ね合わせて読んでしまう。
物語の青年がなぜ自殺をしたくなったのか。それは、計画をした上でではない。
落とした新聞紙の上にゴキブリが止まってたことがきっかけで「ああ、世の中はこんな仕組になってるんだな」と悟り、死にたくなってしまったのだ。
仕事で評価されていて、お金がある。多くの女性を虜にする魅力もある。
「死にたくなるような事情」など何もない。それは三島由紀夫との共通点でもある。
死ぬことが怖いわけではない。先が読めないことが怖い。
三島由紀夫も主人公と同様なことを考えたのではないか。死ぬことは、彼にとって最も恐れることではなかったのだ。
魅力3 後半で話がつながる快感!
この物語は青年の命を買おうとする様々な人々との関わりが面白いのだが、ラスト50ページほどはさらに面白い。
今までの話がピタッとつながる瞬間がある。読んでみて、ぜひそれを味わってほしい。
新たな読書ジャンルを切り開きたい!でもいきなり難しい本を読むことにためらいがある。
そんな方は三島由紀夫の「命売ります」を読んでみてはどうだろうか。
私は生まれて初めて昭和の文豪の作品を読破したことで少し自信になった。他の三島作品も読んでみようと思う。
コメント