これは今話題になっている文庫本だ。
私はその話題性とタイトルのインバクトに惹かれてこの本を買った。
文庫化されていてよかった。
初めてタイトルを見たときは、妖怪か何かが膵臓を片手に舌鼓を打っている・・・そんなグロテスクな絵を想像した。
しかし、背景が爽やかすぎる。
私はすぐにその想像を打ち消した。
後ろのあらすじを読む。
膵臓の病気で余命わずかな少女と少年の出会い・・・。
なるほど、そっち系か。
病気の少女を支える少年、というのはあるベストセラー小説を彷彿させる。
私はその経緯とラストを容易に頭の中で組み立てた。
しかし、私の思考はあまりに安直すぎた。
この本は、感動的な闘病記などではない。
予想を良い意味で裏切る、本屋大賞2位になったのも納得の1冊だった。
さて、ここからネタバレと感想である。
私が注目したポイントは2つある。
1. 余命1年なのに、あまりにも明るい少女・桜良(さくら)
まず惹かれたのがヒロインである桜良のキャラクターだ。
明るい。
とにかく明るい。
余命1年にもかかわらず。
いや、健康な人よりもずっとずっと明るい。
おみくじで大吉を引き、「病、やがて治る」と書かれた紙を見て、「治らないっつうのー!」と爆笑する彼女。
「鼻腐ってるんじゃないの?」と言われたとき、「腐ってるのは膵臓ですー」と究極のブラックジョークをかます彼女。
主人公の「僕」との会話がとにかくポップで、一文字一文字が笑える。
桜良が病気なんて嘘で、何十年後もこうやって笑って過ごすのではないか。
そう錯覚してしまう。
この明るさと、彼女の運命とのギャップに泣けてしまう。
2. 桜良の死に方
これは究極のネタバレである。
私はこのページを何回も見返し、「え?」と声に出して驚いた。
桜良は死んでしまう。
それは、プロローグでわかっていたことだ。
しかし、彼女は通り魔に刺されて死ぬ。
膵臓の病気ではなく。
え?なんで?なんで?
いろんな疑問が私の頭の中を駆け巡った。
大切な人たちに看取られながら、余命わずかな少女が闘病の末に命を落とす。
それができてはじめてこの物語は完結するのではないか。
誰かが「助けてくださいー」と空港で叫びながら・・・ってそれは別の話か。
しかし、その死に方はあくまで物語の中の話だ。
病気だろうが健康だろうが、死神は平等に私たちのもとにやってくる。
病気だからって病気で死ぬとは限らない。
言われてみれば当たり前の話だが、言われるまで気づかなかった。
私の物語も、誰かの物語も、突然終わってしまうことはあるのだ。
3.まとめ
だから1日1日を大切に・・・なんて決まり文句は言いたくない。
でも、自分の人生がいつ終わったとしても「可哀想に」って思ってもらいたくはない。
桜良は精一杯生きた。
辛いことも苦しいことも経験し、ブラックジョークが言えるほどに充実した日々を送っていた彼女。
どのような形で終わりを迎えようと、それは彼女なりに完結した人生なのだから。
毎日交通事故で多くの人が亡くなっている。
朝出かけるときに挿しっぱなしにしていた携帯の充電器とか、放置した洗い物とか。
自分が次の日もその次の日も生きる前提で残していた多くのもの。
彼らはそれらを残し、突然旅立ってしまう。
でも可哀想か?
可哀想ーだけで終わらせる人生でいいのか?
90歳で大往生しても、10歳で亡くなっても、同じ人生。
人生の価値は長さではない。
価値の有無を第三者が決める権利なんてない。
そう思わなければ、誰かを失った悲しみに耐えることなんてできない。
ちょっと支離滅裂になってしまったが、とにかく、この話は病気をテーマにした話で異形なものだ。
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