この本は2014年初版と、割と最近出た本で、中高生の青春が詰まった3編の短編集。
私が辻村深月さんの作品が好きな理由は2つある。1にストーリー。2に話同士の関連性。
まずはストーリーについて。
どの話も最初から最後まで一貫して「青春!」を貫いている。
「友情」だけではなく、中高生の悩み多き複雑な心を短い文章中にキレイにまとめている。
中でも気に入ったのは、表題作である「サクラ咲く」だ。
自分の意見をはっきりと言えない読書好きの主人公マチが、友達との関わりによって少しずつ変わっていく。
「自分は自分でいい」よく聞くフレーズだが、本当は「変わりたい、理想の自分になりたい」という願望を誰もがもっている。
それに向かって悩みながら努力した結果、今の自分があり、それを認めていくことは確かに大事だ。
しかし、何もしないで「そのままの自分」を受け入れるのは如何なものか。
マチのように今を懸命に生き、なりたい自分に近づける努力をする中学生がたくさんいるといいな、と心から思う。
次に話同士の関連性について。
実は、辻村深月さんの作品は作品同士の関連性があるものが多い。
もちろん、話の1つ1つは独立していて、単体できちんと面白い。
しかし、前の話の主人公が次の話の主人公の友人として再登場することもあるから、それを発見するとますます楽しい。
文章中に散りばめられたヒントを見つけていく過程がまるでパズルをやっているかのようで、パズルのピースがカチッとはまった瞬間、一仕事終えたような爽快感を味わうことができるのだ。
サクラ咲くの3編も、もちろん繋がっている。
どうつながっているかは書かないが、読んでいて爽快な気持ちになるのは間違いなく第3話の「世界で一番美しい宝石」だ。
他の2編の主人公の人生にも折り合いがついていて、満足感がすごい。
とにかく、どの話も面白かった。
現役の中高生にも、青春をもう一度味わいたい人にも是非読んでほしい。
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