【コテコテの青春物語】辻村深月 スロウハイツの神様【毎日をつまらないと感じている方に】

読書感想

辻村深月さんの作品との出会いは大学生の頃だった。「凍りのくじら」から始まり、様々な本を夢中で読んだ。

これほど主人公たちに共感し、実際に生きている人間かのように思いを馳せ、本を閉じるのが惜しいと思った本に出会ったのは生まれて初めてだった。

分厚いのに読めてしまう。不思議な文章の力。

「スロウハイツの神様」は私が大学時代に感銘を受けた本の一つだ。

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

あらすじ

主要人物は若手脚本家の赤羽環。

「スロウハイツ」は環が所有するアパートの名前で、環は友人たちを誘い、スロウハイツで共同生活を始める。

特徴的なのは、スロウハイツに集う仲間達は全員がクリエーターだということだ。

画家だったり、漫画家だったり…。でもまだ「卵」がついている。

環はすでに脚本家としてデビューしていたが、アパートのナンバーワンは環ではなかった。

10代から熱烈に支持を集める作家、チヨダ・コーキ。本名、千代田公輝。

環と公輝を中心としたスロウハイツで日々様々な事件が起きていく。

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

あまり詳しく書くとネタバレになってしまうが、この話はコテコテの青春物語だ。

ジャンルは違えど、それぞれが夢を追いかけて、夢を語り合う。

関係があまりに近い故にぶつかり、自分のありのままをさらけ出す。

一人一人の感情の揺れが痛々しいほどに伝わってくる。

この話を読むと、自分も何かをしたい衝動に駆られてしまう。

人の人生を180度変えてしまう威力をもつ何かを。

クリエーターはすごい。自分の人生を切り売りし、人に分けている。

その力が、絶望の淵に立つ人間にわずかな希望を与えたり、「今日死のう」と思っている人間の寿命を1日延ばしたりする。

読書の力はすごい。この話は壮大なサクセスストーリーだ。

それと同時に壮大なラブストーリーでもある。とにかく、読了感がいい。無気力に苛まれている人に特にお勧めしたい。
スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

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