「予知夢」は「探偵ガリレオ」に続くガリレオシリーズの第2作であり、2話の短編から構成されている。
2007年に放送された福山雅治主演の大ヒットドラマ「ガリレオ」の原作だ。私もドラマ「ガリレオ」を楽しんで見ていた記憶があるが、原作「予知夢」も負けず劣らず面白かった。
なぜ東野圭吾さんの作品はヒットし、映像化までされるのか。それは、作品に万人受けする魅力があるからだと思う。
魅力1 表現が端的で、読みやすい
「予知夢」は短編集ということもあるが、東野圭吾さんの作品は全般的に回りくどさがない。
必要な情報や情景描写は抜かりなく丁寧に描かれているが、蛇足部分が少なく読みやすい。
そのおかげで誰にとっても気軽に読める、ファンが多い作品となっているのだと思う。
特に予知夢は読みやすい。作品の世界に入っていくのに数ページ。いつでもどこでもガリレオの世界に浸ることができる。
魅力2 オカルトを大真面目に論理的に解明
探偵ガリレオこと物理学者湯川学は極めて論理的な人間で、科学では解明できない「火の玉」や「ポルターガイスト」を信じる人間が嫌いだ。かといって、始めから「そんなことありえない」と言って投げることはしない。
なぜこのような現象が起きるのか。オカルトを大真面目に分析し、論理的に解明しているところが爽快感があり、実に面白い。
私が「予知夢」の中で好きな話は「夢想る(ゆめみる)」と「予知る(しる)」だ。
「夢想る」は犯人が小学校の頃から想い続けた空想の少女「モリサキレミ」が現実に現れ、ストーカーをするという話。
「予知る」は自殺をする女性を予知してしまったという鳥肌が立つ話。
実は全ての事件を科学の力で解明しているわけではないが、ただの「偶然」や「奇跡」で片付けないで正面から事件と向き合い、なおかつ慌てる様子もなくさらっと解決をしている。1冊で5話分も楽しめるなんて、とてもお得だ。
魅力3 ガリレオこと湯川学という人物が面白い
物理学者湯川学は冷静沈着、頭のキレがいい。しかし、興味があること以外は何もせず、インスタントコーヒーを愛する変わり者だ。
事件に向き合う姿勢も「絶対に解決してやる!」という気合溢れたものとはほど遠く、気がつけば事件の鍵を発見している。
さりげなすぎて読者も、友人刑事草薙も気づかない。でも、だからこそ面白いのだ。
また、事件を毎回依頼する刑事草薙とは大学の同級生だ。長い付き合いだからこそお互いのことをよく知っている。この2人の兼ね合いを見るのも軽快で面白い。
ミステリー小説というものは、何か教訓を得ることを期待して読むものではないと私は思っている。ただただ楽しみたいから読む。これで十分だ。
ガリレオシリーズは、純粋に楽しんで読書をしたい人にぴったりの作品だ。
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