原作は人気作家、湊かなえである。漫画化もされている本作品の原作を私は読んだことがあり、とても面白かったのを覚えている。
映画もシーンの切り替えなどのテンポがよく、とても面白かった。


白ゆき姫殺人事件
あらすじ
化粧品会社に勤める会社員三木典子(菜々緒)が何者かに殺害された。
最も怪しい人物として名が上がったのは、同期の城野美姫(井上真央)で、現在行方をくらましている。
誰もがうらやむルックスの典子に対し、平凡のルックスの美姫。
フリーライターの赤星雄治(綾野剛)は、美姫の周囲から事情を聞き、だんだんと美姫の人物像や典子との関係を浮き彫りにしていく。果たして事件の真相は?
この作品を見て、私が印象に残ったこと
人の記憶は捏造される。人は自分の都合のいいようにしか記憶を語らない。
この作品の大部分は、美姫の周囲の人々からの話で構成されている。
何も考えないで見ていると、ついついその話が全て真実であるように感じ、美姫の人物像が定まってしまう。
しかし、語られていることは真実とは限らない。
嘘をついているという自覚は関係なしに、人の記憶は捏造され、事実がねじ曲がっていく。
そう、私たちは曖昧な記憶に左右されているのだ。
だから、同じシーンでも人によって捉え方が全く異なる。真実を見る目が大切なのだ。
また、これらの理屈からもう1つ言えることがある。
それは、人は過去に縛られるべきではないということだ。
(実際に楽しかったかは置いておいて)楽しい思い出を胸に秘めることは大切だし、自分の宝物になる。
しかし、過去のトラウマを引きずっていても、百害あって一理なしだ。記憶は偽物かもしれない。
たとえ、本物だったとしてもそのときの感じ方はきっと、自分の都合のいいように解釈し、納得してしまっている可能性が高い。
「今、この瞬間」を常に大切にして生きるべきだと思う。
人は物事を断片的にしか捉えられない。
この作品の大きなテーマの一つは「ネット社会の闇」だと思う。
フリーライターの赤星がツイッターで拡散してしまった美姫の情報が、作品の大きな鍵となるからだ。
人はインターネットを見て好きなことをつぶやいたり語ったりする。
「言論の自由」があるからそれ自体は罪に問われない。
しかし、物事の側面しか知らないのに、全てを知っているかのように語る人が多い。
私たちは、報道されているニュースを徹底的に見ても、事実の半分も知ることはできない。
仕方がない。しかし、それを見てあたかも自分が100%を知っているかのように語る。
そして、それがときどき人を殺す。私たちは自覚しなければならない。
自分が無知であることを。物事の側面しか知らないことを。そして、自分の発言に責任をもつべきだ。

白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫)
最後に
「白ゆき姫殺人事件」は最後まで飽きることなく見られる、とても面白い作品だった。
菜々緒や井上真央の演技力も光っていた。
見た後にいろいろと深いことを考えてしまったが、ただ単に楽しんで見るというだけでも十分価値のある作品だと思う。

白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫)
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